この記事を書いた人
櫻澤佑季
櫻澤佑季(さくらざわ ゆき) 
スターティアに営業として入社後、同年グループ会社のスターティアラボにて約300社のホームページのコンサルティングを担当。
2018年事業部の分社化によりMtame(エムタメ)に転籍。2019年よりスターティアレイズにてマーケティングに従事。

RPAとは?

RPAとは「Robotic Process Automation」の略であり、業務支援システムを用いて業務を自動化することを意味します。これまで私たちが手作業で行ってきた仕事の一部をPC内やネットワーク上で働くロボット(業務支援システムやソフトウェア)に代行させることで、業務を効率化するというものです。多くの企業や自治体がRPAに期待しているのは、データ照合やシステムへの転記など定型業務の時間を減らすこと・時間のかかる作業から人間を解放してくれることです。煩雑な反復業務による時間外労働や人材不足といった課題を持つ組織にとっては、労働環境を一変させる可能性を持っています。

なぜ向いている業務と向いていない業務があるのか

とはいえ、どんな仕事でもロボットによって自動化できるわけではありません。
RPAに向いている業務はあるアクションに反響する形や具体的な指示に沿う形で、効率的に対処することが望ましい仕事です。RPAの導入事例を見ても、システムへの自動入力や経理・総務・人事といったバックオフィス部門の自動化、定型作業が多い部署の業務改善などを目的としたもが圧倒的多数です。
これらの仕事は「手順が決まっている仕事」と言い換えることができます。RPAを導入することで価値を感じられるのは、ミスなく同じ処理を繰り返すことが求められる業務であるといえるでしょう。

RPAでできる業務

RPAに向いている業務を一覧化させると以下の通りになります。

■顧客管理・データ整理

入力されたお客様情報の伝票化
提出データの抽出、仕分け

■問い合わせ対応

問い合わせ内容に基づくWebページ案内
問い合わせ顧客の情報ヒアリング、照会

■情報の収集・分析

Webページ上のキーワードカウント
公文書のダウンロード

■レポート作成

広告の管理画面から個別のレポートを作成
GoogleAnalyticsなどから必要な情報を抜き出しレポートを作成

向いている業務の事例

RPA導入に向いている業務の事例として、「営業部門のテレアポリストのチェックの自動化」があります。
営業が作成したテレアポリストを、既に取引があるお客様がいないか、商談が進んでいるお客様がいないか、など一つひとつチェックをしていく作業をRPAのロボットで自動化させた例をご紹介します。

RPA導入前の課題

オンライン広告代理店を営む企業では、クライアントのニーズや状況に応じてリスティング広告やYouTubeやFacebook、LINEのパッケージ広告など広告媒体の選定や、媒体に合わせた動画制作を行っています。
RPA導入前は、営業部門も管理部門でも同じように転記作業が発生し、誰しもが持つ定型的な作業を効率化できないか、ロボットに業務を行わせて業務負担を軽減できないか、と考えていました。

RPA導入までの比較検討

まずRPAの検討を始めるにあたって、インターネットで検索を行ったところ、英語のRPAが無料で使えることを知って実際にダウンロード。ただ、かなり使い勝手が悪く、エンジニアでなければ使えないな、と感じていました。

RPA導入前について

RPAを導入しても使ってくれないと導入した意味がなくなってしまうので、使える人を教育しなければならない、と担当者の方が強く感じていました。そこで各部から2名ずつ人を選抜して、スペシャリストを育成し、その人たちを中心に社内でRPAを広めて行ってもらおうと考えていました。ただ、管理部だけは人事、経理、総務と個々の仕事の内容が全く異なっていたので全員参加を必須にさせ、全社から約20名の人材が集まりました。

RPA導入後の効果について

『営業部門で作成し活用しているテレアポ先のチェックリストについては、1人あたりの作業時間が毎日30分~1時間削減できています。レポートの作成時間については30分かけていたのが0になったので、効果としてはかなり大きいです。
営業部全体では新卒30名も合わせて現在約100名弱の社員がいるのですが、単純計算で1日100時間分の業務時間が削減できています。』

このように、RPA導入前は部署をまたいで発生していたデータの転記作業の手間を減らすことができ、営業に時間を割いたり他のロボットを作成する時間にあて、より生産性の高い業務に従事することができるようになりました。

RPAでできない業務

一方でRPAには対応できない仕事もあります。それは人間の判断が求められる仕事です。以下のような仕事を自動化・効率化するという役割は、RPAが担えるものではありません。

  • 商品のプロモーションを成功させるために、どのような販促媒体を組み合わせればいいかを考える。
  • 自社の強み・弱みを明らかにするために、どの会社をベンチマーキングすればいいのかを考える。
  • お客様の問い合わせ内容から潜在的なニーズを探り出し、新しいサービスを生み出す。
  • 自社に来客が来た際や、電話の応対をする。
  • 倉庫に製品の在庫がどのくらい残っているのか目視で確認する。
  • より良いチラシデザインにするために、デザインの校正をする。

「企画・計画すること」「クリエイティブなこと」「人の目で見て確認すること」「応対業務」はRPAに向いていない仕事であり、上記のような役割は人間が担い続けなければならないものだと言えます。組織の状況を分析した際、この部分に課題があるという場合、RPA導入によって解決するのは難しいでしょう。

RPA導入のメリット

RPAを導入し、日々の仕事を最適化することには、多くのメリットがあります。時間外労働の軽減による従業員の不満解消や、人的ミスの削減など、実にさまざまです。さらに、RPAによって生まれるメリットは「ネガティブなことを減らす」ということだけではありません。

たとえば、「手順に従えばだれにでもできるルーティンワーク」から優秀な社員が解放されるということは、その時間を使ってその人にしかできない仕事ができるということです。企画力や発想力が求められる仕事に取り組む時間が増えれば、その人の価値はより発揮されるようになるはずです。

このようにRPAを導入するメリットは、定型業務の時間を減らすことで、より会社や個人のコアの部分や付加価値の高い仕事に費やせる時間を増やせるという点にあります。

RPA導入のデメリット

RPAを導入するデメリットは、大きく分けて2つ考えられます。1つは、導入前に準備作業を要することです。どんな作業かというと、おおむね以下のような流れです。

1. その部門で行われている業務を全て棚卸しを行って洗い出し、全ての業務を可視化できる状態にする。

2. 対象となる業務の中から、RPAに任せる業務とそうでない業務の2つに分類する。

3. RPAに向いている業務を選定し、適用させる。

上に挙げた通り、RPAには委託できる作業とそうでない作業がはっきりと分かれています。そのため、行き当たりばったりの導入では期待通りのメリットが得られない、ということになりかねません。洗い出しから選定までの一連の作業に関しても、一部のメンバーに任せきりにしたり「これをRPAに任せればよいだろう」となんとなく決めてしまったりということでは、RPAの実力を十分に発揮できません。ヒアリングシートなどを用いて全ての業務を一覧にし、ブラックボックスになっている業務がない状態にしたうえで行うことが業務の改善・効率化につながります。

2つ目は導入後の運用・管理面での問題です。多くの場合、RPAの導入は簡易であり、業務の置き換えもスムーズに行えます。しかし、導入後の運用・管理には手間がかかるといわれています。たとえば、前日までうまく機能していたシステムが突然予期せぬ挙動を始めた際、どこにその問題があるのかを明らかにするには、専門的な知識・スキルが必要になります。

また、業務フローの見直しを行う際やひも付けていたWebサイト・データの変更を行う際にも、どの情報がどのRPAと結びついているのかを把握していなければ、思いもよらない手間が発生してしまう恐れがあります。

導入が簡単だからこそ、どのような形で導入したのか、どのように機能しているのかは、しっかりと整理して把握しておかなくてはなりません。後々のことを考えた際にこのような手間がかかってしまうことが、RPA導入のデメリットだと言えるでしょう。

まとめ

今回はRPAに向いている業務・できない業務、向いている業務の事例、そして導入のメリット・デメリットを解説しました。近年RPAが注目を集め、多くの企業に導入されているのは、確かな効果があるからに他なりません。また、対応できる業務と向いていない業務がはっきりしている分、検討しやすい点も要因でしょう。

導入を検討する際には解消したい業務を細分化し、具体的に考えていくことで、それがRPAによって解決できるかどうかが明らかになるはずです。