膨⼤な⼿続き作業の効率化と将来への危機感
マニュアルもない中で⾮効率で我流の作業が増加
同法⼈の売り上げ全体の3割から4割を占めるのが約450社分の社会保険⼿続きだ。この膨⼤な量の⼿続きを5名の従業員で運営しており、何とか効率化ができないものか⽇々頭を悩ませていた。
⼿続き業務については数年前に電⼦申請を導⼊した為、導⼊前に⽐べればずいぶん改善はされたものの、紙が多いことに加え、マニュアルも整備されておらず、古い従業員の我流が引き継がれていた為、属⼈的で⾮常に⾮効率なやり⽅が多かった。
「とにかく⼿続きが多いんです。変⾰前は、パート社員が作成した⼿続き書類を社員や有資格者が印刷をして、⾚ペンでチェックをして、パート社員に戻して、パート社員が電⼦申請をしていました。今後、算定基礎届や労働保険の申告も年末調整の源泉徴収票に集約されるという話もあります。そうすると、⼿続き業務での収益も4割程度はなくなっていく。⼿続きにお⾦とリソースを掛けていると、淘汰されていくという危機感を常に持っていました。」(加藤⽒)
導⼊までには約1年半の道のり
AI-OCRとRPAを活⽤している他法⼈へ⼿続き業務を⾏う従業員を連れて⾒学に
AI-OCRとRPAは約1年半前に業界紙を⾒て知った。その後、社労⼠会の研修を通じて実際業務で活⽤している法⼈の講演を聞き、動画を⾒て、導⼊したいと思った。
その後、第⼀経理グループ全体のIT推進のプロジェクトチームを交えてRPAの提案を受けたが、その時の提案内容は業務に活⽤できる具体的なイメージが持てなかった点と、⽉額約100万円というコスト⾯がボトルネックとなり導⼊には⾄らなかった。
しばらくプロジェクトは⽌まってしまったが、スターティアレイズが主催するセミナーへの参加をきっかけに再始動。以前⾒送りになった理由の⼀つである“活⽤できるイメージがない”を払しょくする為、各部⾨での活⽤⽤途、費⽤対効果をすべて洗い出した。また、⾃部⾨の⼿続き業務を⾏う従業員を連れて、以前講演を聞いた法⼈に⾒学へ⾏った。
「AI-OCRとRPAの凄さを、私は社労⼠会の研修で⾒て知っていましたが、うちのメンバーが実際に⾒ていないと説得ができない。そこで、実務をするメンバーに実際に活⽤している法⼈の現場を⾒てもらいました。メンバーたちもAI-OCRとRPAの凄さを⽬の当たりにして、導⼊までとんとん拍⼦で進みました。」(加藤⽒)
もう⼀つの⾒送り理由であったコスト⾯も、⽉額10数万円という費⽤感で、⼗分ペイできるという感覚が持てた。また、スターティアレイズの営業担当者の⼿厚いサポートも意思決定における重要なポイントだった。
⽣産性向上に加え従業員のやる気もアップ
残業が減って、且つ売り上げも上がり、従業員から「仕事が楽しくなった」という声
AI-OCRとRPAは「算定基礎届」で活⽤している。算定基礎届は毎年4〜6⽉分の給与の平均を年⾦事務所へ申請して、その年の9⽉からの社会保険料が決まるというイベント。それを450社分電⼦申請をして、その後次々と公⽂書で返ってくる。返ってきた公⽂書(新しく決定した標準報酬額)をAI-OCRでデータ化。そのデータをRPAを使って業務⽀援ソフトに貼り付けをして、10⽉からの控除額が記載された保険料控除⼀覧表を作成する。この⼀連の業務を⾃動化した。AI-OCRの読取り精度が⾼く、従来⾏っていた社員による⼊⼒ミスのチェックも不要になった。
この⼀つのロボで、繁忙期には1⽇8時間×5営業⽇×3⼈分+⼊⼒ミスのチェック分の120時間以上の削減に成功した。
「最近では、社労⼠部⾨の残業が減って、且つ売り上げも上がっている為、グループの代表が全社で⾒習わなければならないと⾔ってくれています。こうして⾃分たちの仕事が認められ、頼りにされることで従業員から「仕事が楽しくなった」という声も聞こえてくるようになり、メンバー達のやる気も向上しています。」(加藤⽒)
他⼿続きも⾃動化してさらなる⽣産性向上を
働く時間を短くしながら今と同じかそれ以上の給与を従業員に払えるようにしていきたい
今稼働しているロボットは⼀つだが、今後はさらなる⽣産性向上を⽬指して公⽂書のダウンロードと⼊退社⼿続きのロボ化も検討している。
「今のロボに加え、公⽂書ダウンロードからのフォルダ振り分け、⼊退社の連絡票からのシステムへの貼り付けをするロボは近々で作成したいと思っています。この3つのロボが稼働すれば、⼿続き業務の⼤幅な削減が⾒込めますので、今後お客様が増えても今のリソースで⼗分対応できる体制が作れると思っています。」(加藤⽒)
加藤⽒は、⾃動化して⽣産性を向上させた先に、事業環境の変化に対応した新たな取り組みも視野に⼊れている。
「AI-OCRやRPAの活⽤で⽣み出した時間は、新規事業開発等にあてたり、休⽇を増やす等の施策に充てたいと考えています。将来的には、働く時間を短くし、今と同じかそれ以上の給与を従業員に払えるようにしていきたいと思っています。」