単純なデータ登録業務が社員の負担に
定期的に発生する単純作業が業務効率を下げていた
同社は、OA 機器や社内ネットワークの構築提案・販売・保守事業を展開している。販売管理部門の業務は、OA機器の受発注手配をはじめとする納品、工事管理、請求業務など、多岐にわたっている。
販売管理部門の課題は、システムへのデータ登録業務や単純な定型業務に時間がかかっていることだった。定型業務の一つに、同社でメンテナンスをしている複合機のカウンター料金の検針作業が上げられる。
検針作業はシャープパワーネットシステム(以下SPN)を利用して行っているが、FAXまたはインターネット回線を利用するため、回線状況や顧客側の複合機の電源が入っていない等の問題で頻繁にエラーが発生していた(毎回50~100件)。
エラー処理はSPNを再度利用してデータを再取得するという単純作業だが、1回2時間ほどかかる作業を月に5回(約10時間)実施していた。一方、社員の業務状況によっては再取得作業が5回実施できない月もあり、その際はエンジニアが現場へ赴き対応していた為、エンジニアの作業工数の増加に繋がっていた。
「お客様へ請求書を発行するタイミングで検針を行うので、正確にデータ取得をしなければなりません。できるだけ小まめに再取得の作業をすれば取得率も高まり、現場に赴く負担も減らせるのですが、何時間もかかる作業なので、なんとか改善ができないか試行錯誤して いました」(石渡氏)
現場部門でも使いこなせることを重要視
どんなに良い製品でも、最初に「使いにくそう」と思われればRPAに対するネガティブな意識が生まれる
販売管理部門では各種サービスの申込書や手配書データの入力等、データ入力の作業に多くの時間を費やしていた。また、利用している各システムが連携していないこともあり、同じ情報を複数回入力することも頻繁に発生していた。この状況をなんとか打開できる方法はないかと模索して辿り着いたのがRPAだった。
RPAのツール選定にあたっては、短期間で導入できること、スモールスタートできること、自分たちで使いこなせることを条件に調査し、いくつかのRPAツールに絞りトライアルの実施などもした結果、最終的にはグループ内のスターティアレイズから提案を受けた「Robo-Pat」の導入を決めた。
「どんなに良い製品でも、最初に『使いにくそう』と思われればRPAに対するネガティブな意識が生まれ、社内の普及が進みにくくなってしまいます。今後社内でRPAの適用領域を広げていくことを考慮し、現場部門でも使いこなせる可能性については特に重視していました。その点において「Robo-Pat」は現場の担当者にも触ってもらい反応も良かったので、間違いないだろうと思いました。トライアル期間は最初の勉強会も含めてスターティアレイズの担当者から丁寧なサポートを受けられたため、比較的早い段階で導入の判断が付けられた点も良かったです」(石渡氏)
重要なのは「ロボットに合わせた業務フロー」
5つのロボットを運用し、データ登録を定型化RPAを最大限活用するため、工程を増やす選択も
ロボットは社員がテストで複数作成し、同社の業務フローに合致した5つのロボットを運用している。
「手間がかかっていた業務を自動化することで工数削減に成功しています。社内業務だけでなく、現地でエンジニアが作業する工数も削減できました」(石渡氏)
RPAをより効果的に活用するために、あえて作業工程を増やすことで、全体の効率化を図るという方法を発見した。新しく追加した作業工程の一つに「データ作成」が挙げられる。RPAで自動化するために必要なデータを、20~30分かけて先にまとめておく。データ作成を別途行うことでスムーズにロボットを動かすことができ、結果的に全体の業務効率が向上している。
「業務フローをロボットに合わせるという考え方が重要です。今ある業務を全て自動化するというよりは、ロボットを使うためにどう改善したら効率化できるかを考えました」(石渡氏)
今までは業務量が増えると人員を増員して対応していたが、RPAを取り入れたことで、採用や教育にかかる時間やコストの削減にも繋がった。業務量が今後増えても、今の人数で業務を行う事ができる体制を構築できたことが、RPAを導入して一番の効果と言える。
販売管理部門全体で更なる業務効率化を
誰もがロボットを作成できるスキルを身に付け組織全体で継続的改善を行う
主に顧客管理と工事管理にて、RPAを運用し始めてから約1年が経過。業務効率化の効果を日々実感している。今までのロボット作成は石渡氏を中心に担っていたが、今後は組織全体でロボット作成ができる仕組みを作り、活用の幅を広げていく予定だ。
「ハイスペックな機能が備わっているRPAもありますが、「Robo-Pat」は基本的な機能に限られているので、初めて導入するにはぴったりでした。今後も新しいことを始める際に、RPAがあると可能性が広がります」(石渡氏)
今後は、FAXで送られてくる顧客情報もあるので、AI-OCRを活用して自動化する業務範囲を広げることで、更なる効率化を進めていく予定だ。さらに、複数のツール間でデータを管理できるよう、データの一元管理や連動など、さまざまな機能を持つロボットの作成を行い、継続的な業務改善に取り組む。