各現場にヒアリングを実施。数々の手作業が浮き彫りに
現場で自動化ツールの提案会を開き、工数削減をイメージしやすいようサポート
株式会社フルキャストホールディングス(以下、同社)は、人材派遣や人材紹介サービスを展開する大手人材サービス企業。他企業から業務の一部を請け負うアウトソーシング事業も展開しており、人々の「働く」を多方面から支えている。
RPAの導入を検討する以前より、同社の情報システム部では「業務の自動化」を進めていきたいという気持ちがあったという。
当社がRPAツールの導入をご支援している企業様は、自部署内でスモールスタートを切ってから全社的に広めていくケースが多い。しかし、同社では情報システム部が主体となり、スタート時から会社全体を対象に働きかけを進めていった。
「値を変更するのみの資料作成を毎日手動で行うなど、非効率な業務フローが会社全体で蔓延していることは認識していました。人の手で同じことの繰り返し作業を行うことは、やはり勿体ないと感じ、情報システム部として何かできないかという気持ちが芽生えていきました」(杉本氏)
杉本氏は各部署に対し、RPAを含む自動化ツールの提案会を実施した。提案と同時に、現場に潜んでいる単純作業の事例をヒアリングし、改善すべき多くの課題をリストアップ。
その中で、優先度が高いものから順に着手していくこととなった。
決め手は「使いやすさ」スキル不問でも運用が可能
ゆくゆくは現場の人が主体となって自動化を進められることを理想に
同社では、各部署に向けて自動化ツールの提案会を行う前に、情報システム部で様々な自動化ツールの情報収集を実施した。ツール選定において重要視したポイントは「専門的な知識の無い現場の人間でも使いこなせるものであること」だった。
情報収集後、いくつかの製品のトライアルを利用し実際に操作。その使いやすさを重点に比較し提案するツールの決定に至る。
「最初は情報システム部が主導でロボを作成していきますが、ゆくゆくは現場の人が主体となって自動化を進められることが理想だと考えています。そのため使いやすさというのはツール選定において最も重要なポイントでした。Robo-Patは画像認識により見たままで、直感的にロボを作成することができ、現場の方にも理解しやすいツールだと感じたので導入を決定しました」(杉本氏)
他にも、アルバイトスタッフの時給以下で導入できる価格帯や、1ヵ月単位で契約ができるという導入ハードルの低さも決め手のひとつとなった。また、他のRPA製品では認識しなかった、自社システムとの相性の部分がクリアできたことも評価のポイントだったという。
1ステップを自動化しただけで月300時間の削減に成功
単純作業のRPA化でスタッフのリソースが増加。現場の社員からも次々と改善要望が挙がる
今回のインタビューでは、工数削減事例を4件お話いただいた。RPA導入により削減した時間は、一番少なくても月40時間、多いもので月300時間と、どの事例も高い効果が出ているものばかりであった。
ここでは一番削減効果の高かった「コンタクト履歴入力業務」の事例を紹介していく。本業務は、情報登録催促メールを送信したアカウントに対して、送信日時の登録およびステータスの更新を管理システムに入力するというもの。
言語化するとたったの1ステップであるように思えるが、対象件数が数百単位にのぼる作業をすべて手動で行っていたため、1ヵ月に約300時間を費やしていた。
その工程をRobo-Patを使用して完全自動化。スケジューラーを利用し、夜間に送信日時の登録およびステータスの更新がすべて自動で行われるように設定した。
その結果、データ入力業務で手一杯になっていたアルバイトスタッフに、他の業務をまわすだけの余力が生まれ労働生産性が格段に高まったという。
「明らかに“勿体ない”と感じる単純作業に、人の手を使っていた事実に驚きました。現場もRPAの存在は知っていたが、具体的にどんなものであるかは知らなかったようです。その便利さを知ってしまうと、次々に改善要望の声が上がってくるようになりましたね」(杉本氏)
現場主体で業務の自動化を促進できる状態を目指す
ロボを作成できる人を増やすことが目前のミッション
同社は、大規模な業務改善やコスト削減の実績を出しているが、現在社内でロボを作成できるのは杉本氏のみであるという。
この状況を受け、これからの展望について次のように語った。
「現在、情報システム部には各部署からたくさんの業務自動化の要望が集まってきている状況です。優先順位をつけて着手しているのですが、対応を長らくお待たせしてしまっている部署もあります。まずは部内にRPAツールを使いこなせるメンバーを増やして社内全体の業務自動化を進めていく予定です。各部署の方々にもツールの操作方法を覚えてもらって、現場主導で業務の自動化を実現してもらえるようにしていきたいと考えています」(杉本氏)