業務効率化とは?
まずは、業務効率化とはどんなことを指すのかを確認しましょう。
業務効率化とは、業務の「ムリ・ムダ・ムラ」な部分を削減し、効率的な業務遂行を目指すものです。ちなみに、この「ムリ・ムダ・ムラ」の3つを削減するという考え方は、業務効率化に積極的に取り組んでいることで知られているトヨタ自動車で取り入れられいるものです。
「ムリ」は、人や設備などに過度な負担がかかっている状態のことです。例として、その人の能力をはるかに超えた業務量が与えられている、過度な残業が恒常的にある状態などを指します。
2つ目の「ムダ」は、付加価値を高めない現象や結果を指します。例えば、別部署からの指示を待つ、社内プレゼン用のパワーポイントのレイアウトを整えるなどの業務が該当します。
トヨタでは、この「ムダ」を7種類に分別し、日々の業務の中で発見して削減できないかを検討しています。先ほど挙げた別部署からの指示を待つことは「手待ちのムダ」、社内プレゼン用のパワーポイントのレイアウトを整える業務は「加工のムダ」に該当します。
3つ目の「ムラ」は、生産量が業務量などのばらつきを指します。例えば、製品を過剰に生産することはミスや不良品が生まれる原因になりますし、反対に量が少ない時には必要以上に時間をかけてダラダラ業務が行われる可能性があります。このムラをなくし、必要な時に必要な量の生産量・業務量が生まれるようにすることも業務効率化の一環です。
企業が成長している時期や業務が集中している時期には、このような状況はよく見られます。これらは一時的にこなすことは可能ですが、継続的に行うことは不可能です。メンタルヘルスの悪化やハラスメントの温床にもなりかねません。業務を見直し、属人性を排除するなどして見直しに努めましょう。
出典:恐るべし!トヨタがあぶり出す「7つのムダ」
業務効率化の進め方と注意点
それでは、具体的に業務効率化を進めるためにはどんなことを行い、どんな点に注意すればよいのでしょうか。
進め方
業務効率化は、以下のフローに従って行うとよいでしょう。
現状把握と業務の可視化
まずは社内・部署・チーム内の全ての業務を洗い出して現場を把握します。この際、ただ業務をリストアップするだけでなく、それぞれの業務にかかる時間や発生する頻度、何人で担当しているか、担当者名などもあわせて把握するようにしましょう。
効率化を図る業務を選択
上記で洗い出された業務の中から、効率化させたい業務を選択します。一般的には、下記に該当する業務が効率化を図りやすいといえます。
・定型化されている(できる)業務
・頻度が高い業務
・単純な業務
新しい方法の検討と実施
さらに、その業務をどんな方法で効率化させるのかを検討します。新しいツールを入れる、外部に委託する、工程を短縮・削除する、不要な業務であれば廃止するなどの方法が考えられます。さまざまな角度から検討し、よりよい方法を提案しましょう。
検証と評価、さらなる改善策の立案
取り入れた方法を運用してしばらく経ったら、本当に効率化が図られているかを検証し、評価します。また、さらなる改善案がないかもあわせて検討します。PDCAサイクルを回すことで、より高い効果をあげることができます。
注意点
業務効率化を図る上で注意したい点がいくつかあります。まず、業務効率化の目的をメンバーが共有していないと、手段が目的化してしまいます。
また、業務の工程を変更することによってかえって手間がかかるようになる、一度に多くの業務を効率化してしまい、混乱が生じたり中途半端になってしまうなどの事態も懸念されます。
これから業務効率化を進める場合には、遂行しやすい業務から取り掛かり、検証や評価の段階まで行った上で次の改善案に取り組むのがよいでしょう。
社内ですぐに取り組める9つの業務効率化アイデア
「業務効率化を図りたいけど、どこから手をつけたらよいか分からない」という時のために行いたい、9つのアイデアをご紹介します。
アイデア1 タスクを見える化する
メンバーが独自の方法で進めている作業があるなど、業務の中でブラックボックスは意外と多いものです。タスクは全て洗い出し、見える化しましょう。
アイデア2 業務の優先順位を決める
普段何気なく行っている業務の中には、優先度が低いものもあるかもしれません。今一度優先順位を検討し、重要度や優先度の高いものから行いましょう。
アイデア3 ムダな作業を無くす
普段何気なく行っていることも、実はムダな作業かもしれません。業務を客観的に見て、ムダな部分がないかを今一度確認しましょう。
アイデア4 業務をまとめる
例えば、これまでは複数のメンバーが行っていた同一の作業を一人のメンバーが担当すると、効率が上がります。各々の時間を節約するだけでなく、情報共有が遅れるなどのデメリットをカバーすることも可能です。
アイデア5 役割を分担する
アイデア4とは反対に、1つの作業を分担することで、業務にかかる総時間数を短縮することも可能です。分業することによってメンバーの役割に集中してもらえる、トレーニングを受けたメンバーに加わってもらうことで属人化を防げる、複数のメンバーがスキルを習得でき、メンバーのスキル向上につながるなどのメリットがあります。
アイデア6 マニュアルやフローチャートの作成
業務遂行のためのマニュアルやフローチャートを作成することにより、作業を標準化させて業務の属人化を防ぎ、効率化を図ることが可能です。異動や休職などの事態にも対応しやすくなり、メンバーが安心して業務を行える環境づくりにもつながります。
アイデア7 自動化する
必ずしも人間が行わなくてよい業務は、自動化するというアイデアもあります。例えば、エクセルへの文字入力にマクロやVBAを導入する、製品やサービスへの問い合わせにチャットボットを導入するといった方法が考えられます。
アイデア8 アウトソーシング
必ずしも社内のメンバーが行わなければならない仕事でなければ、アウトソーシングする方法も見受けられます。この方法により、社内のメンバーにはコア業務に集中してもらうことが可能です。また、アウトソーシングすることにより、その分野に秀でた優秀な人材を活用できることもメリットとして挙げられます。
アイデア9 ツールを導入する
新しいツールを導入することにより、業務効率化に成功する事例も多くあります。特に現代では、コミュニケーションツールやデータ管理ツールなど、特定の業務を行うためのツールが数多く存在します。これらを活用して、業務効率化を目指しましょう。
業務の効率化に使えるツール紹介
それでは、業務の効率化に使えるツールをご紹介します。自社内でツールを開発するという手段もありますが、近年はさまざまなツールがリリースされており、またIT技術の発達によって安価で使いやすいツールが提供されるようになりました。
ぜひ、積極的に情報を集め、自社や部署の課題にぴったりのツールを見つけてください。
コミュニケーションツール
ビジネスでのコミュニケーションツールとして、長らく活用されているのが電話、メール、FAXなどです。しかし、これらのツールには一度にコミュニケーションを取れる人数が限られている、気軽にコンタクトを取りづらい、大量の資料を送ることが困難、資料ファイルの管理が困難などのデメリットがあります。
これらを解決してくれるのが、コミュニケーションツールです。具体的にはビジネスコミュニケーションやファイルのやりとり、管理などが可能なChatworkやSlack、オンラインミーティングに特化したZoomなどがあります。
RPAツール
先ほど、効率化を図りやすい業務として「定型化されている(できる)業務」「頻度が高い業務」「単純な業務」の3つの特徴を挙げました。これらの特徴を持つ業務を効率化させられるのが、RPAツールです。
RPAはRobotic Process Automationの略で、直訳するとロボットによる工程の自動化を指します。ロボットに作業工程を覚えさせ、稼働させることで作業の効率化を図ります。
RPAはRobotangoやWinActorなどさまざまなツールが提供されています。社内業務や使用人数などを検討した上で導入しましょう。
オンラインストレージサービス
オンラインストレージは、サーバー上のスペースにファイルをアップロードすることにより、ファイルを閲覧・共有・編集できるサービスです。 インターネットに接続されたデバイス(PC・タブレット・スマートフォンなど)があれば、職場以外の場所からでもファイルの閲覧や編集ができるので、営業パーソンが外出先で資料を確認したり、リモートワークや在宅勤務などの柔軟な働き方にも対応できます。
オンラインストレージは、セキュアSAMBAなどさまざまなサービスが提供されています。利用人数や容量、金額などプランも豊富ですので、比較した上で最適なサービスを見つけてください。
名刺管理
社外の人との取り引きや交流で、名刺交換をする機会があります。しかし、名刺は属人的なデータです。受け取った個人の資産となってしまう傾向があり、会社として相手方とどんな関係があるのかが分かりづいらいツールです。
そこで、名刺管理サービスを利用すると、名刺をはじめとする取引先データ・顧客データを一元化することが可能です。そのため、営業活動や社外との協働、マーケティングなどさまざまな分野で役立てることができます。
名刺管理サービスとして代表的なものは、sansanがあります。
タスク・プロジェクト管理
日々の業務で遂行するプロジェクトは、どれがどこまで進捗しているかを把握することが困難です。また、プロジェクトや業務を行っていると、これらに付随して膨大なタスクが生まれます。タスク管理は時間がかかり、煩雑な業務ですので、効率化が求められる分野でもあります。
これらを管理できるツールを導入することで、プロジェクトの進捗状況やタスクの完了度合いを見える化し、業務効率化を推進しましょう。
タスク・プロジェクト管理サービスとして代表的なものは、Backlogがあります。
勤怠・経費・会計管理
勤怠・経費・会計などバックオフィス分野については、細かい事務作業が膨大に発生します。人数が増えたり、企業活動が活発化することによって、作業工程や必要とされる業務も増えます。エクセルなどの既存のアプリケーションでは対応しきれない部分も多くなってきます。
そこで、これらの分野にも効率化ツールを導入して業務をスムーズに行えるようにしましょう。勤怠管理システムとしてIEYASU、経費や会計を管理するツールとしてfreeeなどが提供されています。
これらのツールはさまざまな国の企業からリリースされていますが、初心者は日本企業からリリースされているツールを選ぶことをおすすめします。理由は、海外企業のツールはサポートやQ&Aが英語で提供されていることが多いので、いざという時に不便を感じる可能性があるからです。
まとめ
今回ご紹介した業務効率化は、主にオフィスで行われる事務作業を効率化させることを念頭に置き、解説しました。また、「ムリ・ムダ・ムラ」は製造業であるトヨタ自動車が発祥の概念です。このことから、「無駄を削減してツールを導入する業務効率化は、オフィスワークや製造業の分野でしかできない」と考える方もいるのではないでしょうか。
しかし、ツールを用いた業務効率化は、銀行やホテル、マスコミなどさまざまな分野で行われています。それぞれのツールのページを見ると、さまざまな分野での業務効率化が行われています。
さまざまな成功事例を参考にしながら、ぜひ自社や部署にとって最適のツールを見つけ、業務効率化を進めてください。