近年、業務上で「紙」の使用頻度を減らし、ペーパーレス化・電子化を推進している企業が増えています。しかし、紙からデータへの具体的な移行方法がよく分からず、惰性で紙の利用を続けているケースも。ここでは、ペーパーレス化のメリット・デメリットや、成功のためのポイントなどを解説していきます。
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近年、業務上で「紙」の使用頻度を減らし、ペーパーレス化・電子化を推進している企業が増えています。しかし、紙からデータへの具体的な移行方法がよく分からず、惰性で紙の利用を続けているケースも。ここでは、ペーパーレス化のメリット・デメリットや、成功のためのポイントなどを解説していきます。
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ペーパーレス化とは、その名の通り紙をなくすことです。ビジネスシーンで使われる文書を電子化することで、紙への印刷を少なくします。このペーパーレス化が進んだ背景や現状を説明します。
昨今、ペーパーレス化が進んでいる背景には、2004年に制定されたe-文書法(電子帳簿保存法)や、2018年に閣議決定された世界最先端デジタル国家創造宣言・官民データ活用推進基本計画があります。e-文書法は、それまで紙での保存が義務付けられていた国税関係書類などの法定保存文書の電子化による保存を認める法律です。そして世界最先端デジタル国家創造宣言・官民データ活用推進基本計画は、IT戦略として行政サービスの100%デジタル化などを行うためのさまざまな取り組みを指します。膨大な文書管理を行う行政で電子化が推進されていることも後押しとなり、企業でもペーパーレス化の必要性が叫ばれています。
ペーパーレス化の進捗は緩やかなのが現状です。日本製紙連合会によると、2005年の「印刷・情報用紙」の内需量は年間約1,200万トンでしたが、2010年には20%程度減少して約995万トンになりました。しかし、2015年には約890万トン、2018年には約800万トンと微減。近年、さまざまな電子化ソリューションが登場しているものの、まだまだペーパーレス化に二の足を踏んでいる企業も多いことが伺えます。
※参考:日本製紙連合会「製紙産業の現状」
紙をなくして電子化を進めることで、具体的にどのようなメリット・デメリットがあるのでしょうか。
まずはペーパーレス化のメリットについて解説します。
ペーパーレス化で紙を減らすことは、印刷コストの削減につながります。印刷するには、紙代やトナー代等コストがかかります。印刷1回にかかるコストは大した額ではないかもしれませんが、日常的に利用していると、印刷コストは膨らんでいきます。また、ペーパーレス化すると紙として保存しないので、重要な資料が劣化したり破損したりすることを避けられます。
ペーパーレス化が進むと、紙の資料の保管スペースが不要になります。その結果、オフィススペースを有効活用することができ、資料を紛失するリスクも低下します。
資料を電子化することで、タイトルなどの文字列から必要な資料を検索できるようになるため、資料の検索・閲覧がスムーズになります。必要な書類がどこにあるか探しにくい場合、その分業務にかける時間が減り、生産性が低下してしまいます。文具メーカーのコクヨが行った調査によると、一般的な会社員が探し物にかける時間は年間150時間にも上るといいます。資料探しにかかる時間を削減することで、業務全体の効率化につながるというメリットがあります。
電子化したデータをクラウド上に保管している場合、いつでもどこでも欲しい情報にアクセスできるようになるというメリットがあります。出張中の社員や在宅勤務の社員も、遠隔操作で必要な資料を閲覧することが可能です。
書面を電子化することにより、メール添付やクラウド上へのアップロードなどの方法で簡単にデータを共有することができます。そのため、資料をスピーディーに共有でき、さらには資料を持ち歩いて紛失や盗難などのトラブルを回避することもできるというメリットがあります。
書面を電子化すると、必要に応じてパスワードやアクセス制限を設けることができるので、セキュリティレベルが高くなります。万が一、メールを誤送信して本来共有すべきではない相手に資料を送ってしまった場合でも、アクセス制限がかかっていれば情報流出のリスクを抑えられるというメリットがあります。
紙の主な原料は木材のため、紙を生産するために森林が伐採されています。ペーパーレス化で紙の消費量が低下することで、環境保護にもつながります。こうしたエコな取り組みによって、企業としてのイメージアップが期待できるというメリットもあります。
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反対に、ペーパーレス化にはどのようなデメリットがあるのでしょうか。
電子化した資料は紙資料と違い、パソコンのディスプレイの大きさよっては見にくい場合もあります。また、複数の資料を見比べる際には、複数台のディスプレイを用意する必要があるなどの手間が発生するというデメリットが生まれることもあります。
紙資料の場合は自由にメモを書き込むことができますが、電子化すると入力形式が決まっている場合や、アクセス制限により閲覧しか許可されていない場合もあるため、メモを書き込めないというデメリットが生じます。結局紙にメモをするしかなく、ペーパーレス化が進まないという事態も起こりえます。
書類を電子化するためのシステム導入の際には、さまざまなコストがかかります。機材などの購入費はもちろん、電子化のための人的リソースの確保も必要となるため、事前にしっかり計画を立てることが必要です。
書類を電子化すると、どうしてもシステムやネットワークの影響を受けるため、不具合によってデータが消えてしまう可能性もあります。こうした事態を想定してデータのバックアップを取る方法も併せて考える必要があります。
書類を電子化して扱う際には、セキュリティ事故を防いだり、パソコンをスムーズに操作したりといったITリテラシーが不可欠です。これが社員に備わっていない場合、紙資料を使っていた時よりも業務の効率が悪くなるといったデメリットや、情報漏えいなどのトラブルが起こったりする可能性があります。
実際に管理部門でペーパーレス化できる業務にはどのようなものがあるのでしょうか。具体的に見ていきましょう。
人事・労務の場合は、雇用契約や退職の手続き、年末調整の手続き、給与明細の発行、履歴書の管理、社員情報の管理などをペーパーレス化できます。
経理の場合は、契約書、請求書、見積書、納品書、領収書などを電子化でき、経費精算もシステム上のみで行うことができます。
また、ペーパーレス化を進めるために活用したいのがスキャナ保存制度です。契約書、領収書、請求書などの国税関係書類をスキャナで読み取って電子データとして保存することを認める制度で、導入には一定の要件を満たし所轄の税務署長の承認を得ることが必要です。詳しくは国税庁のホームページを参照してください。
※参考:国税庁「電子帳簿保存法の概要」
総務の担当業務は企業によってさまざまですが、ペーパーレス化の際には経営陣および他部門のサポート、全社活動の推進が主な役割となります。そのため、ペーパーレス会議や、各種申請・承認フローの電子化など全部門に影響のあるものについて、先行して試験導入を行い、全社導入に向けての課題や解決法についてフィードバックを行うことが求められます。
最後に、ペーパーレス化を導入するためのポイントやツールについて解説します。
ペーパーレス化を実現するためには、以下のポイントを押さえることが大切です。
ペーパーレス化に取り組む場合、経営陣や総務部が積極的に動いて全社的に導入することが重要です。業務上の書類には経営陣の判断が必要なものも多く、電子化の際には必然的に代表や役員が関わることになるためです。また、経営陣が率先して取り組むことで、ペーパーレス化が会社全体にスムーズに浸透することも期待できます。
ペーパーレス化の際に活躍するのがタブレット端末です。持ち運びに便利で操作が簡単なタブレット端末があれば、パソコンがなくとも電子化した書類を確認することが可能です。よって、営業先や外出先からでも資料にアクセスすることができ、業務効率化につながります。
ペーパーレス化の際には、全てを電子化するのではなく、紙として残すものとそうでないものをしっかり決めることが重要です。資料や書類の内容によっては、紙で利用した方が便利な場合もあるからです。
電子化するものは影響度と難易度から優先順位を定め、段階的に進めましょう。一気に電子化を進めてしまうと、現場が混乱する可能性もあります。まずは電子化すべきもの、紙として残すもの、どちらにするか保留しておくものの3種類に分け、電子化すべきものの中でも難易度の低いもので成功体験を重ね、難易度の高いものは中長期的なスケジュールで取り組むことが大事です。
ペーパーレス化の際には、社員にその意義や目的を伝えることで、スムーズに進みます。「必要な書類をすぐに共有できるようにするため」「書類を減らして社内のスペースにゆとりを持たせるため」などの具体的かつ分かりやすい説明をして、社員にも納得して取り組んでもらうことが重要です。
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ペーパーレス化に役立つツールには以下のようなものがあります。
オンラインストレージとは、電子化した名刺や資料などを保管できるサービスです。社内外から閲覧・編集することができます。文書紛失のリスクを抑え、検索の手間を最小限にします。
Web会議システムとは、オンライン上で会議を行うためのツールで、ネット環境さえ整っていればどこにいても会議に参加できるのが特徴です。会議の資料などを電子化すれば参加者がパソコンやタブレットで閲覧できるため、ペーパーレス化に役立ちます。
紙でしか残っていない書類や手書き帳票を電子化して活用したい場合、スキャンした画像データから文字情報を抽出してくれるOCR(Optical Character Recognition)が便利です。さらにそこへ定形業務を自動化してくれるRPA(Robotic Process Aoutomation)を組み合わせると、データの読み取りから基幹システムへの入力までの一連の作業を自動化でき、大幅な業務効率化につながります。
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ペーパーレス化にはさまざまなメリットやデメリットがあります。企業でペーパーレス化を進めるには、社員に意義や目的を伝え納得してもらい、全社的に取り組むことが効果的です。また、電子化する書類の優先順位を見極め、自社の課題に合ったツールやデバイスの導入も検討しながら、段階的に取り組みましょう。
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